■大学と校友会
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白澤宏規
1943年(昭和18年)生まれ
1967年:東京工業大学工学部建築学科卒業
1969年:同大学院中退
東京工業大学工学部助手、
桑沢デザイン研究所非常勤講師、
武蔵野美術大学非常勤講師を経て、
1978〜82年:東京造形大学専任講師
1982〜88年:東京造形大学助教授
1988〜 :東京造形大学教授
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-------まずは、学長ご就任おめでとうございます。また、学長は自動的に校友会の名誉会長も兼任することになります。改めて宜しくお願いいたします。
まずは、学長、並びに校友会名誉会長として、校友会に期待されることをお聞きしたいのですが。
「校友会は発足当時、卒業生の親睦団体として出発したと思うけれど、 現在では、大学そのものを支える団体として成長しつつあるようですね。
今後は、更に自立した団体としての活躍を期待したいと思います。いや、現在すでにそうなっているのかもしれないけれど。」
-------そうなんです。もうすぐ公開される校友会のホームページのURLも、大学の(www.zokei.ac.jp)とは別
のURL(www.zokei.net) を持つことで個別化を意識しています。 東京五美大校友会の集まりでも、それぞれの母校とは独立して、
東京五美大の卒業生として何かしらの活動を起こそうとしているところなんです。 また、前述のホームページでは造形フォーラムという形でバーチャルな
美術館を設け、積極的に卒業生の発表の場を公開していくつもりです。
「面白いですね。桑沢デザイン研究所の卒業生は、桑沢デザイン塾をやって いるけれど、大学校友会も、そのような企画をどんどんおこしていくべきですね。
ただ、五美大との横のネットワークだけではなく、桑沢のOBとの ネットワークも深める必要があるかもしれませんね。」
■第3世代が大学経営に関われる時期
-------今後の校友会と大学との関係ですが、何かご意見をお聞かせ下さい。
「現在、数名の卒業生には学校法人桑沢学園の評議員として理事会の活動を
見ていただいていますが、評議委員としてではなく、直接大学の運営に関わる世代 が 出てきてもいいのではないでしょうか。 ぼく自身8代目の学長になるわけですけど、創立者の桑沢先生と面
識がない学長はぼ く が初めてなんです。桑沢先生が亡くなった翌年に大学に来たわけなんだけど、 そういう意味では、いわば第2世代の学長ということになります。
」
-------白澤学長が教員として赴任なされたのが1978年。ぼくが大学に入学し たのは77年。ぼくにとって、初めて建築を教わった先生であるし、学長にとっては
初めての教え子が僕達なんですよね。あの当時からは、二人でここでこんな話をし て いるとは思いもよりませんでした。(笑)
「その意味で、ぼくの学長としての役割は、次の世代に引き継ぐための交通 整 理だと思っています。卒業生という第3世代が直接大学の運営に関わるための。
卒業生から直接大学の存亡を担う人が出てきてもらいたいですね。」
-------確かに、第一期生では50才を過ぎています。社会的にも発言力がある世代です。やっと大学の教育や運営にも積極的に関われる世代になってきたんですね。
これからは、そういうことを自負して校友会は行動していかなくてはならないし、 大学側も期待してほしいと思います。
■建築家としての学長
-------学長の本業は建築家であるわけですけど、建築家からみた学長の仕事とはいかがなものなのでしょうか。
「建築をやっている自分と、大学行政をやっている自分とを重ね合わせてい
る 部分は多いですね。建築も大学運営も、哲学・理念を持っていないとだめだけど、 言葉の世界だけで抽象的に語ってもだめ。むしろ現場では現実的で具体的なところ
を 捉えていないとだめという点で。」
-------つまり、芸術空間と生活環境の狭間に建築があるように、社会の中で一つの理想としての研究環境と、実質的な教育環境しての大学の間をうまく調整していくのが学長として存在なんですね。
「建築だったらクライアントがいるのに対して、大学には学生がいる。 学生に迎合するわけではないけれど、満足を与えなくてはならない。建築のクラ
イアントだって、迎合したら本当の満足感は与えられないしね。そこがやりがいのある仕事ですね。 」
■最後は体力勝負
-------いきなりのインタビューにもかかわらず、校友会に対する課題から、学長学みたいなことまで、たくさんお話を頂き、学長の力強さを感じました。
「いやいや、建築も大学行政も、最後は体力勝負だよ。(笑)知力も気力も 、体力がないと持続できない。だから、今、体力を鍛えているよ。(笑)
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インタビューの後、自らコーヒーカップを片づけられ、皿洗いもなさるという学長をしり目に退散したインタビュアー一行・・・・。5時以降ならばワインも
戸棚から登場するとのこと。当日は昼間のインタビューだったのを改めて後悔する 次第でしたが、次回に期待します。
(聞き手:校友会常務理事、地主廣明)
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