ZOKE.NET HOME PAGE
校友会員ウェブギャラリー
 
豊田奈緒 44期、美術学科絵画専攻
Bauhaus-Universitat Weimar/ドイツ
■Gallery TOP

■Friends Gallery

■留学生 Report


 

 今回交換留学生としてドイツに滞在し学べる機会を頂きました。私にとって初めての渡欧であり未知の体験でもありました。そしてそれは現在までの私の持っていた価値観や常識を覆し、多くの事を学ぶ事の出来た貴重な経験となりました。今回ドイツ滞在を中心に時間のある時に周辺のヨーロッパ諸国の芸術を見て回る事が出来、またその国ごとの文化や空気感までをも感じ体験をすることが出来ました。


 私が交換留学したバウハウス大学のあるワイマールは、ドイツの首都ベルリンからバスで約3時間・列車で2時間程南西にくだったドイツのチューリンゲン州に属しかつての東ドイツにあたります。周辺は広大でなだらかな丘陵地帯で冬は雪原に、春には一面菜の花、夏は濃い緑から小麦色の大地へと変化します。暖かい時期には様々な種類の花が咲き、季節を通して大変美しく変化する土地に魅了されました。

 バウハウス大学での授業は自ら希望する教授と面談しクラスを選択出来ました。私の属した絵画のクラスはアーキテクチャやフォトグラフより少人数・小規模で、少ないながら制作場所を与えられ隔週で先生がやってきては講評会をするといった、シンプルな内容でした。

 バウハウス大学を含めワイマールは歴史的な街であり世界遺産にも登録されています。ゲーテやシラー所縁の地で(ゲーテの墓・家・別荘・博物館 シラーの家なども存在します)、またドイツ北方ルネサンスの画家ルーカス・クラナッハも生前を過ごしました。旧市街の街角にそびえる独特の風格を持った白い教会にはクラナッハ親子の大作の祭壇画があり私が今回ヨーロッパの中で観たクラナッハの作品の中では最大だったと認識しています。ドイツバロック様式と思われる美しい装飾に包まれたその絵画を観る事が出来た、ただそれだけでもドイツに来る事が出来て良かったと思えました(ワイマール城美術館にもクラナッハのコレクションがあり、クラナッハの家や墓などもワイマールにあります)。同じチューリンゲン州の中にあるエアフルトには宗教改革のルターが通ったというエアフルト大学、さらに西に行ったアイゼンナッハにはルターが籠城したヴァルトブルク城などもあります。ちなみにクラナッハ(父)とルターには交友関係があり有名なルターの肖像画はクラナッハの描いたものです。


 そして旧東ドイツという事もあり、ワイマールの市街から少し外れた北東側にある森林を要した小高い丘の上にはナチス・ドイツによって使用されていたブーへンヴァルト強制収容所があります。現在は博物館として公開されており、ベルリン側から車でワイマールに入る時などにも遠く丘の上にブーへンヴァルトのモニュメントを仰ぎ見る事も出来ます(夜はライトアップもされていました)。それは一見して、美しく文化的な歴史を持つワイマールの象徴的なオブジェなのかと勘違いしてしまうほど堂々とそびえ立っていますが、実際には当時の悲惨な歴史を象徴している史跡なのです。


 このように様々な時代の要素を膨大に抱えたワイマールという街はまさにドイツの至宝と呼ぶに相応しいでしょう。
 そしてワイマールの人々は笑顔こそ少ないものの、情が深くとても親切で勤勉で私もたくさん助けて頂き、ワイマールの街の人達や多くのドイツの人々には心から感謝と尊敬を抱く事が出来ました。
感じた事や学んだ事、訪れた場所を1つ1つ思い出していくと、零れ落ちてしまう程に私は多くを観て学ぶ事が出来ました。欧州で蓄積された記憶を紐解き自らの作品と照らし合せ昇華させる作業もこれから多くの時間を要するでしょう。

 最後に奨学生として採用してくださった東京造形大学校友会関係者の皆さまに深く御礼申し上げます。

Copyright©2005-2008,ZOKEI FRIENDS OFFICE. All rights reserved.