「私のデザインを通じ、みなさんがそれ以前よりほんの少しだけ幸せになることができればと思います。」
2014年にパリ、ニューヨーク、日本で発売された「commom」。
陶器やグラス、カトラリーまでバリエーション豊富に展開するトータルテーブルウエアシリーズはさりげなく生活にとけこむ普遍的なデザインで国内外から評価され2014年グッドデザイン賞並びに2015年ドイツ・IFデザイン賞を受賞しました。
ーー角田さんは校友会の第9回留学奨学生ですがロンドンへ留学された経緯を教えてください。
当時(1990年代から2000年代前半)はイギリスのデザイン界が盛り上がっていて、
ジャスパーモリソンやコンスタンチン・グルチッチなど第一線で活躍していたデザイナーの多くはロンドンのRCA( Royal College of Art)デザインプロダクト科出身でした。
教授陣もロンアラッドをはじめ一流の人が教えていたのでそこで学びたいというのが留学の動機です。
大学卒業後にロンドンへ渡りましたが、すぐにRCAへ入学せずにAZUMIやロスラブグローブの事務所で働きそこで仕事のやり方を教わってから進学しました。一度社会に出てから学生に戻ったことは有効でストレートに進学するより身になっていく確率がそれまでと全く違っていました。
ーーRCA卒業後に無印良品(蒲ヌ品計画)のインハウスデザイナーを経て2011年に独立されましたが、ご自身のターニングポイントは何時でしたか。
RCAの1年から2年の頃です。プロダクトデザインの世界で活躍しようとある種の野望をもって留学しましたが、世界中から志の高い若手デザイナーが集まってきている場所では目立っていかないと埋れてしまいます。そこで1年次は強く世の中にうったえていくようなデザインを多く発表していました。でも段々と派手でコンセプチュアルなデザインに違和感を覚えはじめたのです。私の得意とするのはもっと静かで生活に寄り添っていくデザインだと気がついたのです。それからは、とても充実した時間となっていきました。
ーー世界中にクライアントをお持ちですが、フランスのリーンロゼ社から商品化された「Mortaise」はミラノ・サローネでの展示がきっかけですか。
そうです。日本でインハウスデザイナーとして無印良品で働きつつ、自身の作りたいモノを作ってはデザインタイド・トーキョーやミラノサローネに出品していました。インハウスデザイナーでは出来ないアイディアを形にして個人として発表していたところ目にとまり製品化されました。
?デザインするときに心がけていることは。
まずは過去に作られたものを沢山しらべます。
もともと骨董や古道具が好きで集めていますがそういった歴史の中で残ってきた無名のいいものの形をふまえてデザインしていきます。ゼロからものはうまれないと考えていますし、
奇抜で目立つものは飽きられますので。
ーーデザイナーとして依頼が耐えない人気者ですが、ご自身が優れているところはどんな点だとお考えですか。
古いもの、長く使われたものからインスピレーションをうけて、
現代に合った売れる形状、人に愛着をもってもらう形を、デザインする感覚があるところでしょうか。あとは、人間的にもデザイン的にも正直で裏表がないところかと(笑)。
ーー大学時代のおもいでは。
室内建築専攻でしたが、工房で家具ばかり作っている学生でした。そういう面では工房技師の廣瀬光雄さんといつも一緒にいました。また他専攻の友人も多かったですし、他学科の工房を使わせてもらったりして専攻に縛られないゆるさが造形のいいところではないでしょうか。
ーー食器から洋服まで色々デザインされていますが今後はどんなものをデサインしたいですか。
具体的にはありませんが、全ては人だと思います。「仕事のスタンスが横並びの人」「私というデザイナーと仕事をしていきたいと思ってくれる人」と関わっていきたいです。
最後に、2015年3月で退職される沖健次教授と益田文和教授には在学中より大変お世話になりました。改めて感謝の気持をお伝えしたいと思います。
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<角田陽太>
1979年仙台市生まれ。
2002年東京造形大学卒業。2003年渡英し安積伸&朋子やロス・ラブグローブの事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)デザインプロダクツ学科を文化庁・新進芸術家海外留学制度の奨学生として修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年YOTA KAKUDA DESIGNを設立。多岐にわたり国内外でデザインを発表している。
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