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廣木英子 42期 造形研究家美術研究領域
La bete a cornes/フランス
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■留学生 Report


 

 まず始めに、交友会をはじめ諸先生方、関係者の皆様に留学奨学生というチャンスをいただけましたことを、心から感謝申し上げます。
 今回私は、フランスのパリの版画工房に在籍し制作するという目的で来仏しました。
 パリを志望したのは、私自身がリトグラフを始めた理由が、パリのあるアトリエで刷られた作品をみたことがきっかけだったからです。その作者はピカソでした。その後、カトラン、ロートーレックをはじめ、リトグラフをするものなら誰もが知るような作家がそこで作品を刷ったということを知りました。


 日本にいるうちに、私はその工房、会いたいアーティスト、そして制作可能なアトリエにコンタクトをとりました。準備をし日本にいるころ、「それは無理だ無謀だ」、「いい歳して何しているの」という言葉をよく言われ、自分でも不安になることは沢山ありました。奨学金がいただけるかもわからず働きながら一人でフランス語を勉強しました。
 所属した工房には、フランス、イタリア、アメリカ、日本と様々な国からアーティストが集まり、お互い刺激を与え受けながら制作をしていました。絵画、銅版、リトグラフ、本を作るなど、各々の意図にあった手法で表現していました。
 言語はフランス語が主でした。よく皆で昼食を作ります。前菜、スープ、メイン、カフェとデザートの順です。
 近くの画材店の話や、自分の絵にはどのような素材があうか、インクや紙について、展覧会の話まで、いろいろな話をしました。直感で話すことがあり、日本では言われたことのないような絵への感想やアドバイスがあり、とても新鮮で、その言葉は私の心に電灯をつけていくかのようでした。自分の見えていない感覚がみえるようになったような、そんな瞬間が時々おこりました。
 カメラマンアシスタントの頃の微小な経験ではありますが、それをいかしDMの制作のお手伝いや、アトリエのアーティストのお子さんの宿題のお手伝いができたことはとてもよかったです。


 数ヶ月の後、私は再び日本にいた頃からコンタクトをとっていたアーティストやアトリエにまたアプローチしてみよう、と試みました。こんどはしっかりとしたモチベーション(とフランスではいうそうです)という論文を提出しました。
 色々なことの後、今はそのアーティストにに定期的に絵をみてもらい、美術大学の学生とともに解剖学のデッサンに励んでいます。美術大学では前衛的なことをしようにも根本的な美術の歴史や哲学は若者に受け継がれています。その現場を目の当たりにし、私たちが学んだ日本の西洋美術教育とはいかなるものだったのか、そして日本で私は美術を教える立場でもあったので、美術だけでなく教育の観点からもとても興味深いものでとてもよい経験となっています。
 IDEMアトリエでは研修生として働かせてもらえることとなりました。プロの職人とアーティストとがともに作品を作り上げるという、魔法のような不思議な力が、確かにそこにありました。アーティストの絵が、その空間で産み出され、時には変化します。私は確かにそこにいて、版画作品が産み出される瞬間には鳥肌がたち興奮し、うまく刷れたときには共に喜び、忙しいときには昼食を10分で済ませ手伝いました。アーティストとしてではなく、職人たちとキャップ(船の乗組員の様な意味)の一人としてタッグをくんで働かせてもらえたことは、本当に忘れられない貴重な経験となりました。


 今回の海外研修で様々なことがありましたが、絶対無理だといわれていたことが、今、まさに実現できているということにとても感動するとともに、そこに至るまでに多くの方に助けてもらったり応援してもらったことに、心から感謝の気持ちがわいてきます。自分一人の力ではここまで来られませんでした。本当にありがとうございます。
 そして、夢とは行き着くと、また次のステージが見えてくるものだと実感しています。今の自分にあるこれからの課題をしっかりみつめ、次のステップアップを確実に自分なりに進めていきたいと思います。
 先生、友人、家族に心から感謝をこめて。

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