ZOKE.NET HOME PAGE
校友会員ウェブギャラリー
 
協賛団体展覧会レポート 2013アートアイランズTOKYO 国際現代美術展
大島波浮港&新島本村 (2013年8月30日〜9月15日)
■Gallery TOP

■Friends Gallery

■留学生 Report


 

 私たちのささやかな美術展も3年の月日が流れ、3回の展覧会を経験した。毎回3、4名に参加している造形大学卒業生からは、今回は、佐藤純、佐々木愛美、そして私が作品を発表した。他にもスタッフとして協力してくれた卒業生がいる。



島の上にも……
 メイン会場の小学校は伊豆大島波浮港にある。今はやや寂れて見える港は、元々は海と接した火口だった。その港は江戸時代より人の手によって良港へ作られて来た。その地で、波浮の歴史や、史跡を守る活動をしている「波浮の港を愛する会」には、大変お世話になっている。島という立地では、否が応でもレジデンス形式を取らざるを得ないが、宿舎提供や受付まで地元の支援に支えられた3年間であった。

自然の恵みと牙
 始めの2年間は、自然に抱かれ、その恵みの中で美術展も淡々と流れて行った。湿気と暑さの中で制作し、夕方海風を楽しむ日々は、自然の一部として生かされている自分を意識しつつも、いつか同化してしまうのでないかという不安さえ感じさせるようであった。しかし3年目は、台風の影響をもろに受ける事となった。船便欠航が予想されるため、早期に離島しなくてはならない作家が続出した。予定していたパフォーマンスの中止・台風の中の撤収・新島に渡れないなど様々な影響があった。その時は、大変だと思っていたが、約一ヶ月後にさらに離島の自然環境の厳しさを思い知る事になった。季節外れの台風26号は、大島に局地的豪雨をもたらし,山肌を崩壊させ,島民など39名の犠牲者を出す惨事となった。あらためて、島の生活と、自然が培ってきた文化の背景を思い返す事になった。



魅力ある新島での展開
 今回2013年の大きな特徴は、大島だけでなく新島でも美術展を展開した事があげられる。大島から、二泊三日で新島に渡り制作、展示を行った。新島の本村地区は、石造りの町並みがある。新島の特産の「コーガ石」という空気を多く含んだ軽石が多くの建物に使われ,独特の風景を作っている。家々の敷地を囲むように石塀があり、軽自動車がやっと通る事ができる石塀の小道が迷路のように続く様は、散歩する人々に曲がるたびに新たな出会いがあると感じさせる魅力ある村である。事後の作家のアンケートでも、新島での制作は、印象に強いようで、地域のすばらしさと、期待感の滲ませるコメントが寄せられた。新島での展開を助けてくれた、「コーガー石の風景を愛する人々」にあらためて感謝したい。
「地域おこしとアート」に思う。
 今、各地で様々なアートイベントが行われている。大規模なものも多い。今後も、県単位で行う「◯◯芸術際」「◯◯ビエンナーレ」の計画もあるようだ。その予算も1億円以上を見込んでいるものもある。美術館という箱ものでは納まり切れない発表の多様性を考えると当然の流れだと思う反面、流行と言ってもいい状況と「地域起こしとアート」というくくりで多くのイベントが立ち上がることに不安も感じる。かつて日本中に美術館、博物館が作られていた時代を思い出す。その結果、日本の美術館の数は世界で3位である。しかし、その数ほどの存在意義のある美術館があるとは思えない。
 同様に、既に地域おこしとアートを結びつけて考えることに不安を感じる。地域に展開するすばらしいイベントがある。反面、動員数を一番の成功の証と思うような状況が生まれ。今、参入しようとする企画者は、人が多く来るアート展をめざしているかのようである。その結果、「人を呼べる作家の作品」が、どの会場に行ってもある。美術に携わる者として、どうあるべきか模索中である。



2014アートアイランズの展開
 石の上にも三年の月日が経ち、少しだけ受け入れされつつある私たちのアートイベントだが、課題も山積している。地域に貢献することで、存在意義が上がるが、「人を呼べる作家」「受け入れられる作風」で、失うこともある。
 その中で、2014年は、激甚災害に認定された伊豆大島全島に作品展示を行うことを模索している。「島」繋がりで、ニュージーランド、アイスランドの作家の参加も決定している。
 昨年は、初めて大学院1年生の若い作家も参加した。造形大からの若い力を期待している。

 アイランズTOKYO 東京の島々を結ぶアート航路開発委員会
 委員長   高田 芳樹

Copyright©2005-2008,ZOKEI FRIENDS OFFICE. All rights reserved.