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武内明子 39期 美術学科絵画専攻
WangChien-Yang Studio/台湾
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もともと生活自体が旅行をしている感覚で、朝何時に起きるかも、今日が何曜日かも関係なくて、ただ外に出たら寒かった、雨だったとかで、知らない事もたくさんあって、私がどこにいようが時間は同じように動いている。
年をとったら一年が早く感じるとかいうけど、最近はそんなこともないなと思うようになった。明日いる場所は想像できないけど、今日になれば、まあねって思う。 だから台湾に来て旅をしていて、色んな人と関わってお世話になって、とても特別な体験に思えるけど、それは日本にいても変わらない。生きていれば毎日が新鮮で特別だ。
とは言っても、ここ台湾に来て初めての体験をたくさんした。
まずは初っぱな日本の若木くるみっていう友達が台湾東部の100キロマラソン大会に参加したい、と言い出してそれなら私は応援に行くよ!と思ったけど、参加したほうが断然楽しいと思い、人生で初めてのマラソン大会にエントリーすることになった。
日本から参加したのは私達二人だけだった。たくさんの心熱いランナーに恵まれて、私は50キロ地点でタイムアウト、友達はなんと100キロ完走5位入賞。その後5日間は体が思うように動かなかったけど、一日で人生で初めての体験がいくつもあった。おまけにこんな日本人がいたよ、と私達をバッチリ取材してくださって、後日地元の新聞に記事になって載ったのでした。
「友達の大切さ」
これは今回の旅のテーマだったかもしれない。マラソンの50キロ地点で回収車に乗せられて、ぼーっとそんなことを考えていた。
大学を卒業した後、一緒に住んでいた、年は一つ上だけど一つ後輩の麻生知子とワタリドリ計画という、日本全国を旅し展覧会をする活動をはじめた。これまで約5年間この活動を続けて来て振り返った時、一番に感じた事は、絵でも美術でもないことに少し驚いた。浮かんでくるのは“友情”の二文字。可笑しかった。ワタリドリ計画の活動年表を整理していても、この時こんな事があったな、なんて、懐かしんでみたりして。確かに友情がなければ活動も続かないだろう。
考えてみれば、友情ほど形で表すのが難しいものはない。○でも?でも△でも□でもなくて。
友情には思いやりが必ず必要だ。友達を大切にしていますか?大事な友達がいますか?そう言えば、小学校以来友達についての作文を書いてないような気がする。「わたしのおともだち」
今回お世話になったアトリエの王建揚さんも大切な友達の一人で、2008年私が上野の森美術館で展覧会している時、たまたま通りかかって絵を見てくれた一人の旅行者だった。同世代の王さんは兵役後、これからの人生と制作について悩んでいてちょうど日本を旅行しているところだった。言葉も何も通じないなか、絵だけがダントツに力を発揮していた。それが今に至る。王さんは今では台湾で活躍する一人の美術家だ。
5月末に台北で開催されたYoungArtTaipeiというイベント内で小さな個展を開催した。海外で制作した作品を海外で発表するのは初めてだった。旅をしながら素材を集めた。花蓮で白い石を台南では古い老家の瓦を拾って、木彫の街三義では一週間泊り込みで木を彫り、陶芸の街鶯歌では初めてろくろを回した。大きな絵を描くために友達が広いアトリエを提供してくれた。
学校に留学した訳ではない。旅をしながら考えようと思っていた。自分でもどのような生活を送るのか全く想像できていなかった。でも想像以上だった。縁に恵まれたと思う。
展覧会は多くの台湾人や同世代の芸術家とお喋りすることができて楽しかった。絵がなければ、こんなに交流できていない。だから、絵を描いていて画家で良かったと思う。
今滞在の殆どを台湾人の家庭にお邪魔して暮らしていた。台北から台南まで6家庭。ホテルも快適で好きだけど、暮らしを共にする事はもっと特別だから好き。歓迎してくれた台湾のみんなに感謝です。
今日、日本に帰ります。今飛行機の上です。台湾がもっと好きになりました。すぐに成長したかはわからないけれど、今日浴びた太陽の光がシミとなって出てくるように、見たものも、感じたものも、そのくらいの時間をかけて出てくるんじゃないかな。だからきっといい絵を描くよ。時間をかけて。
日本に着いたら早く会いたい、わたしのおともだち。
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