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末永史尚 30期 美術専攻T類
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「Benday-dots」1998年 162×130cm 綿布にアクリル絵具、顔料

私は絵画という伝統と歴史を持った様式に対して、自らの生まれ育った環境や文化を反映させ、どのようにすれば現代性を持った表現として成立するのかを考えながら制作と発表を続けています。その際に、普段目にしているはずなのに見ていないことにしているもの、視界の隅にあるものを掘り起こし、対象化することを心がけています。

個展「-2009 / imitate」展示風景 2011年 SeeSaw Gallery 撮影:城戸保

起点となったのは、東京造形大学の卒業制作で印刷物の網点を描いた作品を制作したことでした。これは、自分にとっての世界を知ることがテレビや新聞、書籍などの2次的な情報によっていること、また絵を学ぶことすら画集や雑誌などを通しておこなっていたこと、絵を描く原体験が4歳くらいの時の印刷物を描きうつすことであったことなど、様々な経験を経て構成されている自分の状態を表すのに適したモチーフであったからです。その後、モチーフを漫画の部分を拡大したものに拡張したり(2003年〜)、インターネットの画像検索で画家の名前で検索した検索結果画面を描くなど(「サムネイル・シリーズ」2010年〜)、間接的に知識を得ること、またその際の視覚経験を元にした絵画作品を制作しています。


「Search Results」 2011年 30×54cm 綿布にアクリル絵具、顔料

一方、現在の生活環境に納まりきらない大きな作品を制作することに疑問を持ち、展示する場所が大きくても小さくても展示ができる可変絵画「タングラム・ペインティング」のシリーズも2008年より制作しています。これは、シルエット・パズルの一種タングラム・パズルの形で支持体をつくり、それに描画している絵画作品です。環境にあわせて形態を変えることができる可変作品であると同時に、この作品を所有した人が自由に組み替えることができる、自分だけの力では完成をしない絵画作品でもあります。


「水平器」 2017年 120×5×2cm 合版にアクリル絵具 撮影:加藤健

2011年から、展覧会場の模型をモチーフにした作品を作りはじめました。
また2012年より、段ボール箱や消しゴム、水平器などの日用品を、そのものと同じサイズでパネルをつくり、その表面に簡略化して描き写している作品も作っています。洋画的な明暗と奥行きの表現や、日本画的な線の表現にも馴染めなかった自分が、「塗る」という、絵画において作業的な行為に価値を持たせつつ現代的な生物画を成立させたいと思い、続けている制作です。
近年はワークショップ等の開催を通して私個人の感覚を元にした造形表現だけではなく、多くの方とのコミュニケーションによる制作の可能性も探っています。

「Tangram Painting(Knot)」 2014年 60×60cm(サイズ可変) パネル、綿布にアクリル絵具

末永 史尚(すえなが ふみなお)
1974年山口県山口市生まれ。東京都在住。美術家。東京造形大学准教授。
コンクリー トブロックや消しゴム、チョコレートのパッケージ等など、日常的に見ているものや展示空間に関わるものから視覚的トピックを抽出し、絵画・立体作品を制作している。


主な個展
2018年「サーチリザルト」Maki Fine Arts(東京)
2014年「APMoA Project, ARCH vol.11 末永史尚 ミュージアムピース」愛知県美術館 展示室6(愛知)
2012年「やまぐちアーティスト支援事業 末永史尚個展『かげり』」 秋吉台国際芸術村(山口)

主なグループ展
2019年「百年の編み手たち―流動する日本の近現代美術―」東京都現代美術館(東京)
「アートセンターをひらく 第I期」水戸芸術館現代美術センター(茨城)
2014年「1974年に生まれて」群馬県立近代美術館(群馬)など。


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